2019-01-01から1年間の記事一覧

「契機」

”” 人間は必然の〈契機〉があれば意志とかかわりなく千人、百人を殺すほどのことがありうるし、 〈契機〉がなければ、たとえ意志しても一人だに殺すことはできない。そういう存在だと云っているのだ。それならば親鸞のいう〈契機〉(「業縁」)とは、どんな…

ジャズ⑩

・・・ ・・・ ・・・ あの日はたしか、「はじめての宇宙中継」とかって聞いてて、朝からもう、そわそわワクワクだった。 ザーザー、ザラザラの残念なテレビだったけど、あの遠いアメリカ、そのアメリカのたったいまの様子が生で見られる、って、それはそれ…

「戦争」

”” 戦争が原則として違法化されている今日、戦争に関する国際法(戦時国際法)においては、従事する国家の政府は、一定の権利義務が定められている。具体的には 敵戦力の破壊および殺害 中立国の船舶に対しての国防上の要請から、もしくは戦時禁制品の取り締…

ジャズ⑨

女は壁側に向って微かな寝息をたてていた。 寝入るとき胸もとまで引っ張り上げたシーツは太ももあたりにしどけなくまとわっていた。 ぱっさりとした栗色の髪が耳たぶから頬へ頬から口元へ流れ落ちている。 やわらかなうぶ毛がうなじから肩へ肩から腰へ豊かに…

「科学」

”” ヘーゲルが、エンチクロぺディーの第三版の終わりで、理念の各形態がある場合には全推論の両項にもなりまた他の場合にはその中間にもならねばならないことを証明したことによって永久に終わりを告げたのではあるが。つまり、このことを理解すれば、どこか…

ジャズ⑧

朝、ニューオリンズに発つ前にもう一箇所、 「サン・スタジオ」だった。 ここからもうあのエルビスだ。 受付で「ジャンルは?」と聞かれて「なんでも」、「似てる歌手は?」と聞かれて「他の誰とも似ていない」って答えたっていう、 エルビスは、 もうここか…

「喜劇」

“ “ 「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大な世界史的な事実と世界史的人物はいわば二度現れる、と述べている。彼はこう付け加えるのを忘れた。一度目は偉大な悲劇として、二度目はみじめな笑劇として、と。 ・・・ 人間は自分自身の歴史を創るが、しかし、自…

ジャズ⑦

ようやくそれらしい街並みが見えはじめた、 ー ああ、あれだ、 メンフィスだ、 空は全面ブルーに晴れ渡っている、 ー ってところまできて、なんとも疲れた。 狭っ苦しい空の上で14時間以上、レンタカーでもう6時間ほどだ、 まあ、しょうがない。 そうなる…

「自然」

”” 真淵の「国意考」のなかで、もっとも鮮やかにこれをしめすのは太宰春台が『弁道書』で古代日本では「親子兄弟叔姪」が夫婦になって禽獣の行いを平気でやるような態たらくだったが、中華から聖人の道が入ってきてはじめて倫理が確立されたとかいたのに反論…

ジャズ⑥

それは機上で決めた。 もう、7、8時間は飛んでいた。 アメリカの南部へ行くんだからってこじつけで飲みはじめたバーボンのせいか、C・Aから「Chicken or Fish ?」って訊かれるだけでうろたえるほどのダメ英語で先行き不安なせいか、まあ機内の気圧のせいも…