「祖国」

 

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This land is your land,

This land is my land,

From California to the New York Island,

From the redwood forest,

To the Gulf stream waters,

This land was made for you and me.

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As I was walkin’
I saw a sign there
And that sign said no trespassin’
But on the other side
It didn’t say nothin!
Now that side was made for you and me!

In the squares of the city
In the shadow of the steeple
Near the relief office
I see my people
And some are grumblin’
And some are wonderin’
If this land’s still made for you and me.

・・・

「This Land Is Your Land」(わが祖国)

(Words and Music by Woody Guthrie)

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あの頃、かの国のかの詩人は貧困と差別の大地放浪にあって、叙情を静かに抑えながらなお希望の「祖国」を叙景した。

叙情に絡みとられた「祖国」はその人の心に浮かぶだけの孤立の幻影となる。

叙情を抑えながら叙景される「祖国」は人々の共有の幻影となる。

 

 

「祖国」は人々がその「国家」の道義を信じてその「国家」のもとに個々の心身を糾合する姿として幻影される。 

「国家」は科学幻想、宗教幻想、法幻想、経済幻想、民族幻想によってその道義を揺さぶられ不義に陥る。

「祖国」はいまある「国家」の不義によって疲弊した人々が抱く懐かしくも儚く遠ざかっていく共同幻想として幻影される。

 

あの頃から時はめぐってかの国は「国家」の不義によって多くの人々が疲弊した。

 

 いまかの国の新指導者はその「国家」の道義を糺し疲弊した人々の懐かしくも儚く遠ざかっていく「祖国」を惹き戻すため勇躍捨て身で現れ出た。

 いま、かの国の新指導者は大統領府と閣僚と最高裁判所に人事を配し大統領令を繰り出して「国家」の不義をもたらした科学幻想、宗教幻想、法幻想、経済幻想、民族幻想を「国家」に同致して「国家」の道義を糺し、懐かしくも儚く遠ざかっていく「祖国」を惹き戻すため勇躍捨て身で船出した。

 

 

 

 

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「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」

 (「祖国喪失-壱-」寺山修司

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あの頃、この国のかの詩人は虚栄と虚妄の都市に身を潜め、叙情に絡みとられた「故郷」を遥かに夢みながら、港の霧に霞みゆく「祖国」喪失を叙景した。

 

あの頃から時はめぐってこの国もまた「国家」の不義によって多くの人々が疲弊した。

 

いまこの国では「祖国」の礎の「国家」道義の体現者たる「天皇」幻想はその像すら結ばない。

 

もう人々が叙情を抑えながら叙景できる「祖国」は失われた。

もう「祖国」は叙情に絡みとられた人の心に浮かぶだけの孤立の幻影となった。

 

もうこの国には国家」の道義を糾すすべもなく捨て身して惹き戻すべきほどの「祖国」も喪われた。

 

この国はこの「国家」の不義をもたらした科学幻想、宗教幻想、法幻想、経済幻想、民族幻想の、いまはもうその虚構、虚妄が顕になった「近代」という幻想をなお頑なに信仰してその運命を委ねていくほかないところにまでながれついた。